Organometallic Chemistry OGOSHI Lab.

研究内容(フッ素系)

ニッケル系 | フッ素系

はじめに - テトラフルオロエチレンとポリテトラフルオロエチレン -

ポリテトラフルオロエチレン (PTFE) は、テトラフルオロエチレン (CF2=CF2) の 重合により得られる高分子化合物であり、 Du Pont 社の研究員であった Roy Plunkett によって 1938 年に発見されました。 現在、PTFE は「テフロン™」という商品名で広く知られており、PTFE を世界に先駆けて開発・商品化した Du Pont 社はこれを「20世紀最大の発明の一つ」として誇りにしているとも言われています。
PTFE の発見に至るいきさつは非常に面白いので、比較的有名な逸話として知られています。Roy Plunkett は合成した TFE ガスをボンベに充填し、翌朝、いざこれを使おうとボンベのバルブを開けたが TFE ガスはおろか何も出てこない…。 でも、ボンベの重さは変わっていないので、ガスが抜けてしまった訳ではなさそうだ…。そこで、ボンベを切断してみたところ、白いワックス上の物質がボンベの内面にぎっしり付着していた…。これが、PTFE 発見のいきさつです。

PTFE 発見に関する動画はこちらから(ブリタニカの英語サイトに移動します:3分35秒から)

身の回りにあるフッ素

PTFE の発見は、私たちの生活を劇的に変化させて来ました。古くは、アポロ計画での宇宙服やロケットの司令船部分の船底をコーティングするために、 耐熱性・対候性に優れた PTFE が使用されています。

今日でも、我々の身近なところで PTFE が広く使われています。例えば、油を使わなくても焦げ付かないフライパンや、雨水をはじくのに水蒸気(汗)だけを逃がすスポーツウエアは、PTFE の耐熱性、 非粘着性、防水性、 透湿性が利用されています。また、防水皮革の靴では、PTFE を革に染みこませる工夫によって、靴の表面に傷がついても防水性能を維持することが可能となっています。 このような非常に優れた特性を有する PTFE の需要は、 現在もそしてこの先も減ることは殆どないと思われます。
このように、PTFE が優れたポリマーとして機能する所以は、極めて頑強な炭素–フッ素結合によって炭素–炭素結合で構成される高分子主鎖が守られているためです。それゆえ、TFE との共重合により数多くのフッ素系ポリマーが 合成され、 実際に沢山の優れたフッ素系高分子が開発・実用化されてきました。

テトラフルオロエチレンの新たな用途開発を目指して

医農薬品や機能性材料など幅広い分野で利用されている含フッ素有機化合物は、我々の日々の生活をより豊かなものにする上でもはや欠かせないものとなっています。今日では特に、複数のフッ素原子が導入された 複雑な有機化合物を簡便かつ安価に合成しうる新手法の開発が望まれています。
このような背景の下、生越研究室では、工業的に入手容易なパーフルオロ化合物の誘導体化を基盤とする「含フッ素有機化合物の自在合成法の創製」を着想し、世界に先駆けて TFE の分子変換反応の開発に取り組んできました。 そして、TFE そのものの修飾を可能にする我々の手法を用いることにより、新たなフッ素系高分子を生み出すモノマー分子の設計・合成も可能になりつつあります。以下に、これまでの主要な研究成果の一部を示しています。