大阪大学大学院工学研究科・応用化学専攻・物質機能化学コース・物性化学領域

1.Solar-Cells.jpg2.Conjugated-Materials.jpg3.Hybrid-perovskite.jpg4.Evaluation-system.jpg5.Functional-materials.jpg6.Others.jpg


 


マイクロ波分光を基盤としたデバイスレス有機太陽電池評価法の確立

Establishment of Device-less Evaluation of Organic Photovoltaics Using Microwave Spectroscopy
mcontent1.jpg有機薄膜太陽電池(OPV)は、有機であるがゆえに多様な化学的・物理的構造を有し、合成・精製方法や構造的な理由から、電荷キャリア・エキシトンのトラップサイトとなる不純物や構造欠陥が多く含まれています。デバイスの性能はこのような多くの因子が複雑に関係し、性能評価だけでは不明な点が多く存在します。そこで、光励起・マイクロ波法(flash-photolysis time-resolved microwave conductivity, FP-TRMC)を用いて、代表的なバルクヘテロ型(BHJ) OPVcとしてP3HT:PCBM=1:1のOPVデバイスを作製・評価し、同時に作製した電極レスサンプルのTRMC測定を行い、両者の相関を検討しました。その結果、変換効率(PCE)とマイクロ波信号がよく相関することが分かり、TRMCはBHJのモーフォロジーを反映した光電気特性を直接評価することが可能であることが証明されました。これらにより、TRMC法は不純物・劣化効果を最小化し、迅速かつ簡便なBHJ層の電極レス直接評価手法として、プロセス・材料スクリーニングに有効であることを示しました。

  • S. Yoshikawa, A. Saeki*, M. Saito, I. Osaka, and S. Seki*, “On the role of local charge carrier mobility in the charge separation mechanism of organic photovoltaics” Phys. Chem. Chem. Phys. 17 (2015) 17778-17784. DOI: 10.1039/C5CP01604E
  • A. Saeki,* M. Tsuji, and S. Seki, “Direct Evaluation of Intrinsic Optoelectronic Performance of Organic Photovoltaic Cells with Minimizing Impurity and Degradation Effects” Adv. Energy Mater. 1 (2011) 661–669. DOI: 10.1002/aenm.201100143

白色パルスとマイクロ波法を用いた新規デバイスレス評価装置の開発

Development of a New Evaluation Tool for Organic Photovoltaics Using White Light Pulse and Microwave Spectroscopy
ja-2012-09524f_0008.gifレーザー励起TRMCでは光パルス照射源としてナノ秒パルスレーザーを用いていたため、一度に1つの色の光照射しか行えませんでした。したがって、太陽光のように多くの色の光を含む白色光に対する評価を行うにはレーザーの色を少しずつ変えて測定し、太陽光のそれぞれの色での強度補正を伴う解析を行わなければならないため、迅速な評価という特徴を最大限に生かすことができませんでした。また、代表的な電子供与体であるポリチオフェンと電子受容体である可溶性フラーレン(PCBM)の組み合わせで作製された太陽電池には有効でしたが、色の異なる材料を用いた時は、単色の光照射では正確な評価が困難でした。そこで、Xe-flashランプからの白色光を励起光に、マイクロ波を分析光とした評価装置(Xe-flash TRMC)を開発し、未知の材料と薄膜作製条件であっても迅速で安定に性能を診断・予測することを可能にしました。

  • A. Saeki*, S. Yoshikawa, M. Tsuji, Y. Koizumi, M. Ide, C. Vijayakumar, and S. Seki, “A Versatile Approach to Organic Photovoltaics Evaluation Using White Light Pulse and Microwave Conductivity” J. Am. Chem. Soc.134 (2012) 19035-19042. DOI: 10.1021/ja309524f
  • プレスリリース(2012/11/12)大阪大学/JSTプレスリリース

 


ベンゾビスチアゾール(BBTz)を弱ドナーとした新規共役高分子の開発と太陽電池への応用

Development of Novel Conjugated Polymers for Organic Photovoltaics Incorporating Benzobisthiazole as a Weak Electron Donor
adfm201301371-gra-0001-m.jpg高効率なp型低バンドギャップ高分子(LBP)の開発には、深いHOMOと低バンドギャップ、さらに優れた電気輸送特性などを同時に満たさなければなりません。LBPは電子供与性π共役ユニット(D)と受容π共役ユニット(A)を交互に共重合させることで分子内電荷移動吸収を発現させ、上記の条件を満たすように設計します。これまでに新規ユニット開発に加え、多くのDとAの組合せが試されていますが、我々はDとAの分類は必ずしも明確ではないことに着目し、通常はAとして考えられるBBTzを弱ドナーと見なし、強いアクセプター基であるベンゾチアジアゾール(BT)を重合した新規高分子を設計・合成しました。デバイスレス・マイクロ波法で化学構造とプロセスのスクリーニングを行うことで、開発当初は全く性能が出なかった材料をBBTzで最高値の変換効率6.5%まで向上させることに成功しました。

  • M. Tsuji, A. Saeki,* Y. Koizumi, N. Matsuyama, C. Vijayakumar, and S. Seki,* “Benzobisthiazole as Weak Donor for Improved Photovoltaic Performance: Microwave Conductivity Technique Assisted Molecular Engineering” Adv. Funct. Mater. 24 (2014) 28-36. DOI: 10.1002/adfm.201301371
  • A. Saeki*, M. Tsuji, S. Yoshikawa, A. Gopal, and S. Seki, “Boosting photovoltaic performance of a benzobisthiazole based copolymer: a device approach using a zinc oxide electron transport layer” J. Mater. Chem. A 2 (2014) 6075-6080. DOI: 10.1039/c3ta14109h
  • A. Gopal, A. Saeki*, M. Ide, and S. Seki*, “Fluorination of Benzothiadiazole–Benzobisthiazole Copolymer Leads to Additive-Free Processing with Meliorated Solar Cell Performance” ACS Sustainable Chem. Eng. 2 (2014) 2613-2622. DOI: 10.1021/sc5005617
  • E. Al-Naamani, A. Gopal, M. Ide, I. Osaka, A. Saeki*, “Exploring Alkyl Chains in Benzobisthiazole-Naphthobisthiadiazole Polymers: Impact on Solar-Cell Performance, Crystalline Structures, and Optoelectronics“ACS Appl. Mater. Interfaces 9 (2017) 37702-37711.DOI: 10.1021/acsami.7b10619

新規チエノイソインディゴ高分子の合成と物性評価

Design, Synthesis, and Characterization of Novel Thienoisoindigo Copolymers
jp-2013-104728_0014.gifジーンズの染料として使われているインディゴの構造異性体:イソインディゴはπ共役高分子の電子吸引基として用いられ、多くの高分子が合成されています。我々は、イソインディゴのベンゼン環をチオフェン環に変換したチエノイソインディゴ(TIIDG)の反応経路を検討し、新規なπ共役高分子を合成しました。電界効果型トランジスタ(FET)による移動度定量や有機太陽電池の性能評価を行い、さらにフェムト秒過渡吸収分光(TAS)とマイクロ波伝導度法(TRMC)によって、励起子の寿命や電荷輸送過程を詳しく調べました。その結果、TIIDGを骨格とする近赤外吸収高分子は励起子寿命が短く、電荷解離過程と競合していることを初めて明らかにしました。このことは、今後の近赤外吸収有機材料を開発する上で、重要な知見となります。

  • M. Ide, A. Saeki*, “Fluorinated Benzothienoisoindigo Copolymers for Organic Solar Cells: A Comparative Study on Polymer Orientation and Device Performance”Chem. Lett. 46 (2017) 1133-1136.DOI: 10.1246/cl.170307 [ch0]M. Ide, A. Saeki*, Y. Koizumi, T. Koganezawa, and S. Seki*, “Molecular engineering of benzothienoisoindigo copolymers allowing highly preferential face-on orientations” J. Mater. Chem. A 3 (2015) 21578-21585. DOI: 10.1039/c5ta05885f
  • M. Ide, Y. Koizumi, A. Saeki,* Y. Izumiya, H. Ohkita, S. Ito, and S. Seki*, “Near-Infrared Absorbing Thienoisoindigo-Based Copolymers for Organic Photovoltaics” J. Phys. Chem. C 117 (2013) 26859-26870. DOI: 10.1021/jp4104728
  • Y. Koizumi, M. Ide, A. Saeki, C. Vijayakumar , B. Balan, M. Kawamoto, and S. Seki* “Thienoisoindigo-based low-band gap polymers for organic electronic devices” Polym. Chem. 4 (2013) 484-494.DOI: 10.1039/c2py20699d

フラーレンの立体化学が太陽電池性能に与える影響の解明

Elucidation of the Effects of Stereochemistry of Fullerene Derivatives on Solar Cell Performance
GA-Total-3.jpgPCBMに代表される可溶フラーレンは、塗布型有機薄膜太陽電池のn型材料として幅広く使われています。近年は可溶性置換基を2つ以上付加することでLUMOを上昇させ、開放電圧と変換効率を向上させる試みが行われています。しかし、2付加体では複数の構造異性体が存在し、変換効率にどのように影響するかを調べるのは非常に困難です。我々は、キラル炭素を有しない基質から合成したスピロチオアセタール化フラーレン1付加体が特異的な構造異性体を有することを初めて発見し、その構造とポリチオフェン(P3HT)太陽電池の性能に与える影響を明らかにしました。

  • T. Mikie, A. Saeki,* Y. Yamazaki, N. Ikuma, K. Kokubo,* and S. Seki*,"Stereochemistry of Spiro-Acetalized [60]Fullerenes: How the Exo- and Endo-Stereoisomers Influence Organic Solar Cell Performance"ACS Appl. Mater. Interface 7 (2015) 8915-8922.DOI: 10.1021/acsami.5b01818

スピロ(チオ)アセタールフラーレンの合成と太陽電池への応用

Synthesis of Spiro(thio)acetallized Fullerene (STAF) and Its Application to Photovoltaics
STAF.gif有機太陽電池の開発は世界中で行われており、変換効率は急激に向上しています。この性能向上は、主にp型材料の高分子(低分子)の開発に寄るところが大きく、低いHOMOに起因する高い開放電圧と低バンドギャップ化によって短絡電流が向上しています。一方、高効率なn型材料は非常に難しく、この20年間に渡ってフラーレン誘導体PCBMが最も広く用いられています。この研究では、8種類のスピロ(チオ)アセタールフラーレン(SAF, STAF)を合成し、ポリチオフェン(P3HT)太陽電池の性能を評価しました。その結果、その中のひとつがPCBMに匹敵する変換効率を示し、さらに変換効率が溶解度や空間電荷制限電流で評価した正負電荷キャリア移動度のバランスによって支配されていることを明らかにしました。

  • T. Mikie, A. Saeki*, N. Ikuma, K. Kokubo*, and S. Seki*, “Hetero Bis-Addition of Spiro-Acetalized or Cyclohexanone Ring to 58π Fullerene Impacts Solubility and Mobility Balance in Polymer Solar Cells” ACS Appl. Mater. Interfaces 7 (2015) 12894-12902.DOI:10.1021/acsami.5b0245
  • T. Mikie, A. Saeki,* H. Masuda, N. Ikuma, K. Kokubo,* and S. Seki,* “New Efficient (Thio)acetalized Fullerene Monoadducts for Organic Solar Cells: Characterization Based on Solubility, Mobility Balance, and Dark Current” J. Mater. Chem. A 3 (2015) 1152-1157. DOI: 10.1039/c4ta05965d

 


有機・無機ハイブリッドから成るペロブスカイト太陽電池の電荷ダイナミクス

Charge Carrier Dynamics in Organic-Inorganic Perovskite Solar Cells
GA-5.jpg2012年に有機分子と無機イオンから構成される高効率な塗布型ペロブスカイト太陽電池が報告され、非常に高い注目を集めています。この太陽電池は従来の有機薄膜や色素増感とは異なる電荷分離・輸送特性を有していることが分かってきましたが、電荷ダイナミクスや移動度は未だ不明な点が多く存在します。そこで、我々が開発した周波数変調・時間分解マイクロ波伝導度法(Frequency-modulated time-resolved microwave conductivity, FM-TRMC)を用いて、メチルアンモニウム・鉛・ヨウ素から成るペロブスカイト材料の電荷キャリア移動度・トラップ・電荷再結合・電荷輸送機構を包括的に解明しました。

  • H. Nishimura, N. Ishida, A. Shimazaki, A. Wakamiya*, A. Saeki*, L. T. Scott*, and Y. Murata*, “Hole-Transporting Materials with a Two-Dimensionally Expanded π-System around an Azulene Core for Efficient Perovskite Solar Cells” J. Am. Chem. Soc.137 (2015) 15656-15659.10.1021/jacs.5b11008
  • H. Oga, A. Saeki,* Y. Ogomi, S. Hayase, and S. Seki,* “Improved Understanding of the Electronic and Energetic Landscapes of Perovskite Solar Cells: High Local Charge Carrier Mobility, Reduced Recombination, and Extremely Shallow Traps” J. Am. Chem. Soc. 136 (2014) 13818-13825.DOI: 10.1021/ja506936f

ペロブスカイト層から有機ホール輸送層へのホール移動収率直接評価

Direct Evaluation of Hole Transfer Dynamics from Perovskite to Hole Transport Layer
GA-1.jpgペロブスカイト太陽電池は光を吸収し、電荷(正孔と電子)に変えるペロブスカイト層や、正孔と電子をそれぞれ陽極と陰極に分別するための正孔輸送層などから構成されます。太陽電池の光電変換効率を高めるには、高性能な電荷輸送層の開発が重要です。しかし、素子の性能は多くの因子が関与してくるため、有機高分子(ポリマー)や低分子材料から成る正孔輸送層の開発と性能評価には、長い時間と繰り返し実験が必要でした。そこで、マイクロ波法(TRMC)を用いて、ペロブスカイト発電層から正孔輸送層への正孔移動効率を直接評価できる方法を確立しました。通常の素子評価に比べてより安定に、かつ短時間で評価することが可能です。さらに、データ科学的統計法を融合することで、“性能を決める変数”を抽出することに成功しました。今後は、この変数を基に、高性能な正孔輸送材の設計と開発に生かすことができます。


 


時間・空間分解-マイクロ波伝導度測定装置の開発

Development of Space- and Time-Resolved Microwave Conductivit (STRMC)
GA-1.jpg通常のマイクロ波分光法では、大きなレーザー径を試料に照射し、その勝者エリア内での平均的な光過渡伝導度を評価してきました。しかし、塗布法で作製するペロブスカイト材料などは、場所に依存して、ナノメートルからミリメートルにわたる不均一性があると考えられていますが、これまでは評価できませんでした。そこで、光学顕微鏡の光学系と組み合わせ、ステージ(XY)の走査と自動共振点チューニングソフトを開発したことで、レーザースポット径の約40um程度の空間分解能を持つ時空間測定を実現しました。MA-Pbからなるペロブスカイトにハロゲン(I or Br)の量を変えた試料で評価したところ、結晶子サイズと不均一性(Inhomogeneity factor)に負の相関があることが分かり、優れた性能と均一性の膜作製には、結晶子サイズを増加させることが重要と分かりました。

  • F. Caraballo, M. Kumano, and A. Saeki*, "Spatial Inhomogeneity of Methylammonium Lead-Mixed Halide Perovskite Examined by Space- and Time-Resolved Microwave Conductivity"ACS Omega 2 (2017) 8020-8026. DOI:10.1021/acsomega.7b01471

デバイス電圧印可での飛行時間・マイクロ波分光法(TOF-TRMC)の開発

Development of Simultaneous TOF(time-of-flight)-TRMC under External Voltage in a Device
GA-2.jpg通常のマイクロ波分光法では、金属電極や透明電極(ITOなど)を積層した実デバイスをそのまま評価することは不可能でしたが、新たな高調波共振器を開発することで、外部電場を印加した状態で電荷キャリアダイナミクスを評価することに成功しました。代表的な有機薄膜太陽電池デバイスを用いて、飛行時間過渡電流(TOF-TPC)とTRMCを完全同時測定し、電場ドリフトと再結合を考慮した1次元拡散方程式で解析することで、ナノ~マイクロ秒の時間とマイクロメートルの空間(膜厚)に対するホール緩和過程を明らかにしました。さらに、結晶性の異なる高分子の緩和過程と、それらの太陽電池素子性能との関連を見出しました。今後は、実デバイスの動作機構や劣化過程の研究など、多くの展開が期待できます。

  • Y. Shimata and A. Saeki* “Hole Relaxation in Polymer:Fullerene Solar Cells Examined by the Simultaneous Measurement of Time-of-Flight and Time-Resolved Microwave Conductivity” J. Phys. Chem. C 121 (2017) 18351-18359. DOI: 10.1021/acs.jpcc.7b05212

ギガヘルツ周波数変調・複素光電気伝導度の包括的評価法の開発

Comprehensive Evaluation of GHz Frequency-Modulated Complex Photoconductivity
GA-1.jpgこれまでマイクロ波法は単一の周波数(X-band, 9 GHz)に限られてきましたが、我々はギガヘルツ周波数を9~33GHzに渡って不連続に変調し、さらに各周波数で微変調することで複素伝導度の実部と虚部を評価する新たな手法を開発しました。さらに、独自のDrude-Smith-Zenerモデルを構築し、酸化チタン(TiO2)ナノ粒子の光パルス照射で生成した電子の時間挙動を解析しました。酸化チタンは光触媒や、色素増感太陽電池・ペロブスカイト太陽電池でも電子輸送材料として使われる非常に重要な材料です。解析の結果、トラップにつかまった電子のトラップ深さ(100 meV程度)と確率密度を得ることに成功しました。この手法により、これまで見えなかった光電気物性を詳細に調べることができるようになりました。

  • A. Saeki,* Y. Yasutani, H. Oga, and S. Seki, “Frequency-Modulated Gigahertz Complex Conductivity of TiO2 Nanoparticles: Interplay of Free and Shallowly Trapped Electrons” J. Phys. Chem. C 118 (2014) 22561-22572. DOI: 10.1021/jp505214d

 


温度応答ペロブスカイトナノ粒子の発現と機構解明

Emergence of Thermoresponsive Perovskite Nanoparticle and Elucidation of the Mechanism
FeaturImage-1.jpgイオンと分子からなる有機・無機ハイブリッド材料に着目し、オレイン酸とメチルアミンという低分子を適量加えることで、30℃から80℃までの温度領域で下部臨界完溶温度(LCST)現象が発現し、さらに紫外線照射下において、低温で青色、高温で緑色の発光スイッチングが起こることを発見しました。光吸収・散乱・X線構造解析に基づき、低温の溶液中では鉛・臭素・メチルアミンの1次元ワイヤーが形成し、中間体を経て高温で3次元ペロブスカイトナノ粒子が形成する機構を提案しました。また、デモンストレーションとしてビンの中で「オーロラのようなゆらめき」を表現しました。有機・無機ハイブリッド材料は次世代太陽電池材料として非常に注目されている物質で、本研究成果は次世代太陽電池の作製プロセスへの応用も期待できます。


ヘキサベンゾコロネン自己組織化ナノチューブの電荷ダイナミクス

Charge Carrier Dynamics in Hexabenzocoronene Self-Assembled Nanotubes
jz-2011-01223e_0006.gifヘキサベンゾコロネン(HBC)に両親媒性置換基を導入することで、溶液中での自己組織化過程を経てHBCの平面スタック構造をコアとするナノチューブが生成することが東大・相田先生、現東工大・福島先生らによって見出されています。そこで、このナノチューブの電気物性を明らかにするため、マイクロ波法による過渡伝導度測定、過渡吸収分光法によるラジカルカチオン濃度定量を行いました。その結果、チューブ内1次元電荷キャリア移動度は3 cm2/Vsにも達し、一方で減衰挙動の解析からチューブ間移動度は10^-4 cm2/Vsであることが分かりました。ナノとマイクロスケールをつなぐ、これら一連の研究は、理想的な光電気変換自己組織化ナノ構造体の構築に対して重要な知見を与えており、新奇な有機太陽電池の開発・設計に生かすことが期待できます。

  • A. Saeki,* Y. Yamamoto, Y. Koizumi, T. Fukushima, T. Aida, and S. Seki “Photoconductivity of Self-Assembled Hexabenzocoronene Nanotube: Insight into the Charge Carrier Mobilities on Local and Long-Range Scales” J. Phys. Chem. Lett. 2 (2011) 2549–2554.DOI: 10.1021/jz201223e
  • Y. Yamamoto, T. Fukushima,* Y. Suna, N. Ishii, A. Saeki, S. Seki, S. Tagawa, M. Taniguchi, T. Kawai, and T. Aida,* “Photoconductive Coaxial Nanotubes of Molecularly Connected Electron Donor and Acceptor Layers”, Science 314 (2006) 1761-1764.DOI: 10.1126/science.1134441

フルオレン・チオフェン共役高分子の分子内電荷移動度

Intramolecular Charge Carrier Mobility in Fluorene-Thiophene Copolymers
ma-2011-004844_0009.gifチオフェン・フルオレンコポリマーは有機EL材料として、様々な蛍光を示すことが知られています。しかし、その電気特性はあまり調べられてきませんでした。そこで、チオフェンユニットの数、ならびにその導入割合を系統的に変えた高分子を合成し、FP-TRMC法を用いて1次元分子内電荷移動度を評価しました。その結果、オリゴチオフェンユニットの偶数・奇数、および導入割合に応じた依存性が初めて明らかとなりました。高性能有機エレクトロニクス高分子の開発には、高分子構造(コンフォーメーション)を考慮して骨格設計を行う必要性を示唆しています。

  • A. Saeki,* T. Fukumatsu, and S. Seki,* “Intramolecular Charge Carrier Mobility in Fluorene-Thiophene Copolymer Films Studied by Microwave Conductivity” Macromolecules 44 (2011) 3416–3424. DOI: 10.1021/ma2004844

有機単結晶中の電荷ダイナミクスと電荷キャリア移動度異方性

Anisotropic Mobility in Organic Crystals: Charge Separation and Recombination
ncontent.gif有機単結晶材料はグレイン境界がなく、トラッピングサイトも少ないことから有機半導体材料のベンチマークとして注目を集めており、有機トランジスタによる特性評価によって数十cm2/Vsのホール移動度が報告されています。そこで、結晶ルブレンを対象とし、TRMCおよび光過渡分光(TAS)実験を行い、電荷キャリアダイナミクスを明らかにしました。さらに、マイクロ波が空洞共振器中で一定方向に振幅していることを利用し、単結晶ルブレンの非等方的伝導度を電極レスで測定することに成功しました。これにより、種々の有機単結晶・配向高分子で高角度分解電荷キャリア移動度異方性が評価できるようになりました。有機単結晶は他にもレーザー発振媒体としての応用も期待されており、マイクロ波法によって得られた励起子・電荷ダイナミクスの基礎物性は非常に有用です。

  • A. Saeki,* S. Seki, T. Takenobu, Y. Iwasa, and S. Tagawa,* “Mobility and Dynamics of Charge Carriers in Rubrene Single Crystals Studied by Flash-Photolysis Microwave Conductivity and Optical Spectroscopy”, Adv. Mater. 20 (2008) 920-923. DOI: 10.1002/adma.200702463
  • A. Saeki,* S. Seki,* Y. Shimizu, T. Yamao, and S. Hotta,* “Photogeneration of charge carrier correlated with amplified spontaneous emission in single crystals of a thiophene/phenylene co-oligomer”J. Chem. Phys. 132 (2010) 134509/1-7.DOI: 10.1063/1.3367883

金ナノ粒子をテンプレートする共役高分子の自己組織化と電荷キャリア移動度向上

Au-Nanoparticle Templated Conjugated Polymers: The Improvement of Charge Carrier Mobility
jp-2012-039253_0009.gif金ナノ粒子はプラズモン吸収に起因する塗料や触媒として利用されています。我々は、ある種の共役高分子が金ナノ粒子合成時にテンプレート兼保持担体として働くことを見出し、高分子の自己組織化を誘起する試みを行いました。その結果、数十nmの金ナノ粒子を含む場合、共役高分子のホール移動度が約10倍程度向上することを見出しました。通常、金属ナノ粒子はホールのトラップとして働いて電荷移動度を減少させるものと考えられてきましたが、今回得られた反対の結果は興味深く、金ナノ粒子の新たな利用法を開拓できるものと考えられます。

  • C. Vijayakumar, B. Balan, A. Saeki*, T. Tsuda, S. Kuwabata, and S. Seki*, “Gold Nanoparticle Assisted Self-Assembly and Enhancement of Charge Carrier Mobilities of a Conjugated Polymer” J. Phys. Chem. C116 (2012) 17343-17350.DOI: 10.1021/jp3039253

爆発性物質(TNT)検出のための新たな材料と測定法の開発

A New Detection Method of Volatile Molecules (TNT)
TOC-4.jpg従来、トリニトロトルエン(TNT)のような爆発性物質の検出には、蛍光を示す共役高分子からの消光(クエンチ)が利用されてきました。この方法では極微量の物質を検出できるという利点がある一方、選択性と高濃度領域での線形性に問題がありました。我々は、有機太陽電池高分子を開発する中で、ある種の共役高分子と爆発性物質との間で起こる電子移動(電荷生成)によって、マイクロ波伝導度信号が増加することを見出し、濃度によって過渡伝導度の減衰挙動が異なることを発見しました。さらにTNTやDNTなどに対して選択性を有することが分かり、これまでのような蛍光消光ではなく、伝導度増加として物質検出を行う新たな手法を提案しました。

  • B. Balan, C. Vijayakumar, M. Tsuji, A. Saeki,* and S. Seki,* “Detection and Distinction of DNT and TNT with a Fluorescent Conjugated Polymer Using the Microwave Conductivity Technique” J. Phys. Chem. B 116 (2012) 10371-10378.DOI: 10.1021/jp304791r

 


フラーレンナノワイヤーによる太陽電池性能向上の試み

Fullerene Nanowires to Improve Power Conversion Efficiency of Polymer:Fullerene Solar Cell
C60NW.png有機エレクトロニクスにおける電荷担体の輸送経路となる有機半導体ナノワイヤーの開発は、重要な科学的課題です。我々は、単一粒子ナノ加工法(SPNT)を用いてフラーレンナノワイヤーの汎用的な形成法を開発しました。この手法は、さまざまなフラーレン誘導体(純粋なC60、C61やC71の修飾フラーレン、インデンC60ビス付加体)に対して普遍的に適用でき、バルクヘテロジャンクション型有機太陽電池の性能向上に寄与できることを示しました。この研究は、さまざまな有機エレクトロニクス用途に向けて、均一で連続した電子輸送性フラーレンナノワイヤーを製造するための汎用プラットフォームとして期待できます。

  • Y. Maeyoshi, A. Saeki,* S. Suwa, M. Omichi, H. Marui, A. Asano, S. Tsukuda, M. Sugimoto, A. Kishimura, K. Kataoka, and S. Seki,* “Fullerene nanowires as a versatile platform for organic electronics” Sci. Rep. 2 (2012) 600/1-6.DOI: 10.1038/srep00600
  • プレスリリース(2012/8/24) 大阪大学プレスリリース

放射線化学初期過程の研究

Studies on Fundamental Processes of Radiation Chemistry
Pico.jpg電子線によって引き起こされるピコ秒およびナノメータースケールの超高速化学反応を測定するために、パルスラジオリシス装置の高度化を行いました。S/N比を大幅に向上させる手法の開発、波長変換ユニット(OPO)を用いた測定波長拡大、フェムト秒白色光・CCDを利用した高S/N・高波長分解システムの構築により世界最高性能の測定系を構築し、高濃度カチオン捕捉剤存在時での非極性溶媒中での超高速ホール移動反応の測定・解析、テトラヒドロフラン(THF)中の溶媒和電子・熱化電子の反応性の研究、フッ素化芳香族のラジカルアニオンについての反応性と安定性の研究、超高濃度電子捕捉剤添加時の熱化電子・熱化前電子の反応と時間依存空間分布の解明、等の放射線化学初期過程に関する基礎的な研究を行いました。

  • A. Saeki,* N. Yamamoto, Y. Yoshida, and T. Kozawa,* “Geminate Charge Recombination in Liquid Alkane with Concentrated CCl4: Effects of CCl4 Radical Anion and Narrowing of Initial Distribution of Cl–”, J. Phys. Chem. A 115 (2011) 10166–10173.DOI: 10.1021/jp205989r
  • S. Higashino, A. Saeki,* K. Okamoto, S. Tagawa, and T. Kozawa,* “Formation and Decay of Fluorobenzene Radical Anions Affected by Their Isomeric Structures and the Number of Fluorine Atoms” J. Phys. Chem. A 114 (2010) 8069–8074.DOI: 10.1021/jp102828g
  • A. Saeki,* T. Kozawa, Y. Ohnishi, and S. Tagawa, “Reactivity between Biphenyl and Precursor of Solvated Electrons in Tetrahydrofuran Measured by Picosecond Pulse Radiolysis in Near-Ultraviolet, Visible, and Infrared”, J. Phys. Chem. A 111 (2007) 1229-1235.DOI: 10.1021/jp067520m
  • A. Saeki,* T. Kozawa, Y. Yoshida, and S. Tagawa, “Adjacent Effect on Positive Charge Transfer from Radical Cation of n-Dodecane to Scavenger Studied by Picosecond Pulse Radiolysis, Statistical Model, and Monte Carlo Simulation”, J. Phys .Chem. A 108 (2004) 1475-1481.DOI: 10.1021/jp036372m

化学増幅型レジスト中の酸・プロトン拡散挙動のシミュレーション

Simulation of Diffusion and Chemical Reaction of Protons and Acids in Chemically-Amplified Resists
resist.jpg化学増幅型レジスト中のプロトン・酸のダイナミクスを再現し、次世代微細加工で問題となる潜像ラフネス形成メカニズムの詳細を明らかするため、モンテカルロシミュレーションによる潜像ラフネスの形成メカニズムを再現しました。さらに、レジスト現像過程と現像パターンのラインエッジラフネス(LER)の限界を検証するため、潜像シミュレーションに現像過程を適用し、現像後のラフネス形成を検討しました。成果によりレジスト業界で一定のインセンティブを与えると共に、現状での問題点を挙げることができました。

  • A. Saeki,* T. Kozawa, and S. Tagawa, “Origin of frequency-dependent line edge roughness: Monte Carlo and fast Fourier-transform studies” Appl. Phys. Lett. 95 (2009) 103106/1-3.DOI: 10.1063/1.3225149
  • A. Saeki,* T. Kozawa, and S. Tagawa, “Relationship between Resolution, Line Edge Roughness, and Sensitivity in Chemically Amplified Resist of Post-Optical Lithography Revealed by Monte Carlo and Dissolution Simulations” Appl. Phys. Express 2 (2009) 075006/1-3.DOI: 10.1143/APEX.2.075006
  • A. Saeki,* T. Kozawa, S. Tagawa, H. B. Cao, H. Deng, and M. J. Leeson, “Simulation of Amine Concentration Dependence on Line Edge Roughness After Development in Electron Beam Lithography”,J. Appl. Phys. 104 (2008) 024303/1-6.DOI: 10.1063/1.2952046