大阪大学大学院工学研究科・応用化学専攻・物質機能化学コース・物性化学領域

Message:特に研究室を志望する学生へ

物性評価を基盤とした新たな機能性有機・ハイブリッド材料の創成と基礎科学の解明

どんな研究?

Rough-picture.jpg本領域では、光・電気・誘電性といったさまざまな機能の背後にある物理化学を基軸とし、メカニズムの解明、新規機能性材料の開発、新たな評価装置・解析手法の開発を行っています。特に、マイクロ波と呼ばれる電磁波を使った時間分解測定法を駆使して、次世代太陽電池の基礎研究と開発を行っています。太陽電池は光を電気に変換する素子ですが、複数の材料と積層素子構造の結果として「変換効率(太陽光からのエネルギーに対して、電力として取り出せるエネルギーの割合)」が得られるため、素子評価だけでは分からないことが多くあります。多くのパラメータの中から何かに注目することで、性能支配因子の解明や基礎物性の評価が可能となり、高効率な素子実現への設計指針を得ることができます。


物理化学って難しそう

Top-picture-2.jpg「物理化学」と聞くと難しい、というイメージがあるかもしれませんが、現象を根底にある普遍的な概念を用いて説明し、解き明かしていくことは重要かつ非常に楽しいと思います。映画や物語(推理小説)でも、いくつかの伏線(研究では材料や条件ごとの実験結果)が最後に一本の線になり、クライマックス(研究では結論)に向かうことでカタルシスや感動を覚えることがあるでしょう。さらに研究では多くの場合、続編があり、得られた知見や理論を基に他の材料や機能に展開することで、当初は予期しなかった広がりを見せることもあります。物性化学領域では、多様性に富む凝縮系(固体や液体)の化学物質(有機・無機)の機能を、基本的な概念、平たく言うとアイデアや着目点に基づいて論理的に説明し、未来を外挿する知識を創造することを目指しています。


研究室って厳しい?楽しい?

2015-11-momiji-small.jpgこれから研究室を選ぶ人にとっては、研究というものがまだピンとこないかもしれません。研究室は「厳しい」「楽しい」といった安易な表現で言い表せるものではなく、自分がどう考えるか、どう行動するかによると思います。実験結果は因果関係に基づいたシビアなものであり、いくら綿密に企画しても良い結果が出るとは限りません(良い結果が出る「可能性」は変わりますが)。しかし、どのような状況でも、徹底的に思考し、手を動かし、多角的なアプローチを続けることが重要だと思います。このように、科学技術の進歩は機械的・物質的な側面よりも、人の意志が主要な駆動力です。仮に同じ環境・同じテーマであっても、人によって進捗や方向性は変わってくるので、一つとして同じ研究はありません。これから研究者・技術者・企業人として道を歩む学生には、自由な発想と、とことん追求する姿勢を身に着けてほしいと思います。
 研究室では、研究以外にもスポーツ大会・研究室旅行・各種打ち上げといった色々なイベントがあります。また研究活動に関係するものでも、学会で地方や外国へ行ったり、波及性の高い成果・論文が出ればプレスリリース(新聞発表)をしたり、雑誌の表紙に採用されたり、学会では他大学の学生との交流も盛んになります。こういう交流が、例えば10年後に意外なところでつながったりもするので、積極的に交流してほしいと思います。また、修士以上の学生は、少なくとも1本以上、学術論文(英語)の第一著者として研究成果を発表するようにしています。論文発表は研究機関としての大学の責務であり、現在と未来における人類の知的財産の蓄積です。学生の期間は非常に短いですが、充実したものになってほしいと思います。


研究室配属後、何から始める?

experiments-3.JPG研究室配属の後、最初の1ヶ月間で新人のための「基本スキルシート」をクリアしてもらうことにしています。この基本スキルでは、特定のテーマで縛らずに、基本的な物性評価(光学・光電気・膜物性)と解析、デバイス作製と評価、高分子合成、Excelを使った統計解析手法、量子化学計算などを一通り経験してもらい、基本的なスキルを習得してもらいます。また、その間に先輩学生から個々の研究を紹介してもらい、研究内容と背景を理解してもらいます。その後、5月の連休前後に複数の研究テーマの中から、自分で卒業研究を選んでもらいます。5月~6月の2ヶ月間に実験と解析を行い、7月上旬に中間報告をしてもらいます。分からないことは積極的に人に聞き、どんどん自主的に実験を進めて行けば、最初の2ヶ月でも大きな進展があるかもしれません。


雑誌会・報告会・ミーティングはどの頻度?

experiments-2.jpg半年ごとに1人1回ずつ、雑誌会(英語論文の紹介)と報告会(自分の研究)を行っています。研究室には留学生もいるため、冒頭は英語で概要説明することにしています。また、1.5ヶ月に1度のペースで、教員との個別ミーティングを行い、研究の進捗や結果の解釈についてじっくり議論し、方向性を検討しています。学会発表前や卒業発表前には、発表練習と想定質疑を行います。


大学院進学を考えているのですが、

experiments.jpg応用化学専攻では、大部分の学生は修士課程に進学しています。4回生で行う卒業研究は、本人とってはもちろん、指導する私たちにとっても初めて取り組む内容ですので、予想通りに結果が出るのか、どの方向に進むのかはやってみないと分かりません。そこが学部の学生実験とは大きく違う所で、1年間では対象とするトピックの一端が見える程度でしかありません。したがって、少なくともさらに2年間は修士課程で研究を進めるとともに、自分の能力と視野を広げてほしいと思います。7月上旬に報告会を終えた後は、院試休みとして大学院試験勉強に専念してもらいます。外部からの進学希望も歓迎します。院試後は研究生活に戻り、半年後の3月上旬に卒業研究発表会に臨みます。


修士課程での研究はどのような感じ?

Ishida-award.jpg修士1年(M1)は、研究室の運営(スケジュール・試薬/廃試薬管理・イベント企画)の主要な部分を担ってもらいます。また、前期(春・夏学期)は大学院の授業も多いので、自己管理能力と計画力が必要です。M1とM2は、秋の学会(高分子学会、応用物理学会)で口頭・ポスター発表することを目指しています。6月中旬ごろが発表申込みの締切りなので、4回生までの結果に2ヶ月分の実験を加えて予稿(学会発表の内容を1ページにまとめたもの)を準備します。この間、新入生が入ってくるので、「基本スキル」の指導や研究紹介を行い、並行して学術論文(英語)の図や原稿を準備していきます。加えて、修士課程の学生は、1年間に少なくとも1回は国際会議(国内または海外)で発表することを目指しています。その他にも、大小さまざまなシンポジウムやセミナーが開催されるので、関係があるものに参加します。
 年が明けると、春の学会(高分子学会、応用物理学会、日本化学会)の締切りがあります。修士卒で就職する学生は、2~3月ごろから就職活動(エントリーシートや説明会)が始まり、6月頃までに内々定をもらうのが一般的です。一方、博士課程に進学する場合、5月上旬締切りの日本学術振興会特別研究員への応募書類を準備します。それまでに学術論文が出ているかどうかが大きなアピールポイントになるので、M1の12月までに論文原稿が出来上がっているのが望ましいです。M2では大学院授業はほとんどないので、ほぼ研究に専念し、秋には学会発表、年が明けた2月に発表会と修士論文提出に向けて研究を進めていきます。
 修士課程を通じて、学生はスキルと知識の習得や、英語力の向上もちろんのこと、論理的思考力の確立を目指します。実験結果を説明するにはどのようなモデルがふさわしいか、仮説を実証するにはどのような実験をしてどのような結果が得られれば良いか、この結果は今後どのような意味を持つか、など、一連の研究活動には「論理力」「洞察力」「想像力」を養う要素があります。学生個々がオンリーワンの研究を自身の力で行うことで、そういったものが自然と身につくと思います。


博士課程の研究ってどんなん?

idemari.jpg修士課程に引き続いての研究活動と学会発表に加え、博士課程1年(D1)の前期には、企画ゼミや特別講義があるため、M1の前期の時のように研究に割り当てる時間は少なくなります。また、TA(Teaching Assistant)業務を通じて学部学生の実験・演習指導を担います。修士とは異なり、博士課程学生は1人の研究者として自立した研究遂行と自己管理、未来をデザインする能力が特に求められます。したがって、博士学生は、自身で研究を計画・実行し、一人で学術論文の第一原稿を仕上げる能力を必要とします(原稿は、議論して何度も書き直しますが)。また、海外国際学会への参加と海外留学(主にD1~D2の時期)を必須とし、国際性とコミュニケーション能力を磨いてもらいます。
 博士課程卒業後は、大学や研究機関といったアカデミック(初めはポスドクが多い)、あるいは企業へ就職することになりますが、博士課程で得た経験・能力・実績・人脈は必ず役に立つと思います。