講座紹介
有機分子の立体的・電子的要因によって化学反応性は大きく変わります。従って、化合物の特性や反応機構を知ることによって新規反応の開発や、目的とする機能性化合物を効率的・選択的に生成したりすることが可能です。当研究室では、有機反応の置換基効果、溶媒効果を系統的に調べ、速度論的ならびに分子軌道論的取り扱いによって反応中間体を演繹し、反応スキームを確立することを目的としています。特に、フラーレンやキノン・カルボニル化合物のパイ共役系および電子受容性に着目した様々な機能性分子の創成を行い、新規材料としての実用化を目指しています。
主要研究テーマ
- フラーレンやキノンの電子受容能に着目した新規反応の開発
- 有機反応における系統的な溶媒効果および速度論的研究
- かご状化合物の熱および光反応の分子軌道論的解明
- 超親水性フラーレンナノ粒子の合成および研磨剤への応用
- 水溶性フラーレンの簡便合成および抗酸化能評価
- 多付加フラーレンの構造ならびに反応性の解明
- フラーレン誘導体を使用したレジスト・液晶材料への応用
詳細なPDFファイルはこちら(約3MB)
フラーレンとは?
フラーレンは、1985年に発見されたダイヤモンド・グラファイトに続く炭素の「第三の同素体」で、発見者は1996年のノーベル化学賞を受賞しました(下の写真中央が、発見者の一人であるクロトー教授です)。
フラーレンはサッカーボールのような構造をもち、半導体・磁性体・超電導体・太陽電池等の新規材料、1ナノメートル程度の微粒子性を生かした研磨材や、ビタミンC・Eに匹敵する高い抗酸化能を生かした医薬品・化粧品等への応用が盛んに研究されています。
フラーレン多付加体の合成と応用
フラーレンの欠点として、一部の溶媒にしか溶解しないという点があり、塗布材料や医薬へ応用するためには汎用有機溶媒や水へ溶解させる必要があります。本研究室では、Friedel-Crafts反応を用いた芳香族付加による有機溶媒への溶解性向上と、一段階水酸化反応による水への可溶化を研究し、下記のような応用へとつなげていきます。本研究の成果により、小久保先生にフラーレンナノチューブグラフェン学会から大澤奨励賞が授与されました。
FRCプロジェクト(終了)
「燃料電池用フラーレン誘導体膜・電極の開発」が
阪大フロンティア研究機構の平成15および16年度テーマに採択されました。DMFC用電解質膜にフラーレン誘導体を添加して、電池性能を向上させました。試作品も作成しました。
産学連携プロジェクト
機能性化粧品(ドクターズコスメ)原料を目指した水溶性フラーレン誘導体の開発を企業との共同研究により行っています。水溶性フラーレンが活性酸素などのラジカル種に対して、抗酸化能を有することを明らかにしました。(詳細なpdfファイルはこちら)
■関連記事(Information参照):
- 日経ヘルス 2007年9月号pp.84-85
- 日経産業新聞 平成19年7月26日朝刊
- 日本経済新聞 平成16年10月14日朝刊
NEDOプロジェクト(終了)
「半導体研磨プロセス用超親水性フラーレンの開発」がNEDOの平成18および19年度産業技術研究助成に採択されました。
新規水溶性水酸化フラーレンを用い、超LSIの集積密度を高める化学的機械的(CMP)研磨スラリーへの応用を目指しています。さらに本研究を発展させ、抗アレルゲン作用を持つ物質への展開を行っています。
(概略ポスターはこちら)
(研究成果報告書はこちら/NEDOサイト内に飛びます)
■関連論文:
- ACS Nano, 2, 327-333 (2008)
- 最新CMP技術と周辺部材、技術情報協会、第二章第三節(2008)
- 有機分散系の分散・凝集技術、シーエムシー出版、第三編、第三章(2008)
- 精密工学会誌、vol75, 489-495 (2009)(沼田記念論文賞受賞)
■関連記事(Information参照):
- 日経産業新聞 平成19年7月26日朝刊
- 日本経済新聞 平成17年12月26日朝刊
- 化学工業日報 平成20年7月23日朝刊
- 日経新聞プレスリリース(平成21年3月12日付)「大阪大学、杉花粉アレルゲンに対して高い除去能を示す水酸化フラーレンの合成に成功」→日経Tech On!のサイトに飛びます
- 化学工業日報 平成21年3月15日
- 健康産業流通新聞 平成21年3月18日
■展示会:
- SEMICON Japan 2007 平成19年12月5-7日 幕張メッセ
- nano tech 2008 平成20年2月13-15日 東京ビッグサイト