油脂ベースポリマー

 バイオマス資源の中でも、天然油脂は古くから食用として用いられてきたために、その製造法が確立されており、安価かつ大量に供給可能であるという特長が挙げられます。このため油脂は従来の化石資源に替わる工業原料としての利用が期待されます。この様な背景から我々は、油脂をベースとする高分子材料の開発研究を行っています。天然油脂は多数の不飽和結合を有しており、それらの反応により硬化物が得られます。しかしながら、この不飽和結合の反応性は低く、また残存不飽和結合が徐々に酸化されるために、この様な油脂ポリマーは経時安定性の低さが問題点として指摘されています。そこで我々は、この不飽和基をエポキシ基に変性することにより得られるエポキシ化油脂に着目し、これを主原料とする高分子材料の開発研究を行っています。具体的には、クレイやシランカップリング剤などの無機物を用いたナノコンポジット化や油脂と良好に相溶する有機系添加剤を用いて機械的強度・機能性に優れる油脂コンポジットの開発研究を行っています。有機系添加剤には柑橘類の皮や松科の植物の樹液から得られるテルペン油やロジンの誘導体を選択し、植物度が高く環境への負荷の小さな高分子材料の開発を検討しています。また、最も豊富なバイオマス資源であるセルロース資源にも着目し、植物から得られる高強度なセルロース繊維を補強材に用いることにより、機械的強度に優れる油脂−セルロース繊維コンポジットの開発も行っています(詳しくはこちら)。更に、油脂ポリマーマトリックスに熱可塑性ポリマーを分子レベルで複合化した形状記憶ポリマーを開発しました(詳しくはこちら)。
 また、エポキシ化油脂に関しても油脂種(大豆油、亜麻仁油、パーム油)を変え、様々なエポキシ基数のエポキシ化油脂を選択することにより機能・物性の自在なチューニングを行っています。


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