大阪大学 正岡研究室

English

業績

<<論文一覧に戻る

主な研究成果の紹介


  
Angew. Chem. Int. Ed., 2021, 60, 11, 5965–5969.

 天然の酵素のように,複数の機能を併せ持つ触媒システムを創出することはこれまで困難でした。本研究では,触媒サイトに対し電荷移動を助ける部位を導入した金属錯体を開発しました。そして、得られた錯体を電気化学的に重合したポリマー材料において、活性サイトと電荷移動サイトとが協奏的に機能し、効率よく酸素発生反応を触媒できることを見出しました。


  
Dalton Trans., 2020, 49, 1384–1387.

 天然の酵素において、多核金属錯体は多電子移動を伴う小分子変換反応に対する良好な触媒として機能することが知られています。しかし、人工触媒系では、多核金属錯体の触媒能に関してあまり報告例がありませんでした。本研究では、当研究室で水の酸化反応に対する高い触媒能が見出された5核金属錯体骨格に注目しました。そして、金属イオンとしてコバルトイオンを用いることで、錯体の電気化学特性が還元反応に有利になることを見出しました。更に、この錯体は光化学的に二酸化炭素を二電子還元する触媒として機能することが明らかになりました。


  
J. Am. Chem. Soc., 2018, 140, 16899–16903.

 Visible-light-driven catalytic CO2 reduction is usually achieved by using a combination of two distinct functional units, a photosensitizer and a catalyst. In this study, we demonstrate the first example of a Ru complex that can function both as a photosensitizer and catalyst for visible-light-driven CO2 reduction that exhibiting excellent activity, stability, and product selectivity. The key of success is the use of a Ru complex containing mixed phosphine-pyidine ligand.


  
Chem. Commun., 2018, 54, 6915–6918.

 Ru polypyridyl complexes for electrochemical CO2 reduction are often limited by the high overpotential required to access the catalytically active species. In this study, we are able to promote the electrochemical CO2 reduction at a much lower overpotential by using a Ru complex with a mixed phosphine-pyridine ligand. The introduction of a phosphine donor at the trans position to the labile ligand is the key to reduce the overpotential for CO2 reduction.


  
Chem. Commun., 2018, 54, 1174–1177.

 A catalyst module bearing a metal-complex-based catalytic centre and light-harvesting units self-assembles into a well-ordered framework structure through intermolecular interaction. This discrete catalytic module is composed of a Rh(II) paddle-wheel unit as a catalytic node and 1,8-naphthalimide moieties as molecular connectors. The framework serves as a heterogeneous photocatalyst for hydrogen evolution with long-term stability and reusability.


  
J. Biol. Inorg. Chem., 2017, 22, 713–725.

 鉄ポルフィリン錯体はCO2還元反応触媒として機能することが知られていますが、特異な光・電子物性を示す広いπ共役系置換基を有する錯体の反応に関してはほとんど報告例がありませんでした。我々はポルフィリン骨格に種々のπ共役置換基を導入した鉄錯体を新規に開発し、π共役系の拡張により触媒活性が向上することを見出しました。


  
Nature, 2016, 530, 465–468.
プレスリリース(平成28年2月12日)

 多核構造と隣接基質活性化サイトを有する鉄5核錯体が、酸素発生反応を非常に効率よく行う触媒となることを見出しました。安価な鉄イオンを用いた錯体で高効率な酸素発生反応を達成した初めての例であり、今後の人工光合成の触媒開発の重要な指針となることが期待されます。
 Nature Energy、中日新聞(平成28年2月11日)、東京新聞(平成28年2月11日)、化学工業日報(平成28年2月15日)、日刊工業新聞(平成28年2月24日)、日経産業新聞(平成28年3月4日)、マイナビニュースPhys.org等で紹介されました。


  
Sci. Rep., 2015, 5, 13977.
プレスリリース(平成27年9月10日)

 これまで、惑星に酸素がある条件として、惑星に光合成を行う生命が存在していることが必須条件のように考えられてきました。しかし、酸化チタンの触媒作用を利用することで、生命が存在しなくても豊富に酸素を保持した地球型惑星が存在しうることを理論的に明らかにしました。この研究はアストロバイオロジーセンター・成田特任助教と共同で行われました。
 Yahoo! News科学新聞アストロアーツ等で取り上げられるなど大きな反響があり、Nature Asiaの2015年9月期の”おすすめのコンテンツ”にも選ばれました。


  
Dalton Trans., 2015, 44, 17189–17200.

 ホスフィン部位を導入したルテニウム-ポリピリジル錯体は、ホスフィン部位の数や位置によって酸化還元特性や光物性が多彩に変化する興味深い物質群です。本研究では、窒素酸化物(一酸化窒素NOおよび亜硝酸イオンNO2-)を付加した一連の錯体を合成し、電気化学的および光化学的な反応性について詳細に調査しました。


  
Dalton Trans., 2015, 44, 15334–15342.

 金属イオン上の配位不飽和サイトを保持した、置換不活性な錯体ユニットの集積化による多孔性フレームワークの構築は従来困難でありましたが、本研究ではリンカーとしてアレーン-パーフルオロアレーン相互作用を用いることで、置換不活性なRh(II)二核錯体の反応点を保持したまま、多孔性かつ柔軟なフレームワークの構築に成功しました。


  
J. Photochem. Photobiol. A: Chem., 2015, 313, 143–148.

 人工光合成などの光物質変換反応において、光吸収によって引き起こる電子移動過程を理解することは、反応機構解明、新規触媒開発を行う上で重要な知見となります。本研究では、我々が開発した光照射下での溶液系電気化学測定法を用いて、CO2還元能を持つ鉄ポルフィリンの測定を試み、その光反応に由来する電気化学応答の観測に成功しました。


  
Angew. Chem. Int. Ed., 2015, 54, 7981–7984.

 金属錯体を用いた酸素発生触媒反応では、酸素-酸素結合の生成がしばしば律速段階になるため、この過程を効率よく進めるための合理的な研究戦略の提唱が求められています。我々は金属酵素の活性中心をヒントに、金属錯体触媒の第二配位圏に適切な化学修飾を施すことにより、スムーズな酸素-酸素結合生成が実現可能であることを見出しました。


  
Angew. Chem. Int. Ed., 2014, 53, 11519–11523.

 1つの分子内に異なる酸化状態の金属中心を複数もつ「混合原子価錯体」は、生体内の多電子反応から分子エレクトロニクスまで幅広い分野で重要なモデル化合物です。この混合原子価錯体の酸化状態を段階的に変化させたときに、不対電子はどこにいるのか?結合次数はどう変わるのか?などを様々な測定から明らかにしました。


  
Inorg. Chem., 2014, 53, 7214–7226.

 ルテニウム-ポリピリジル錯体は多様な電子状態を取れることから、物質変換反応の応用に向けて精力的に研究が行われています。本研究では新たに、強いπアクセプター性のホスフィンを有する二座配位子を導入し、還元反応に伴う構造変化について分光・電気・計算化学的アプローチから反応機構を解明しました。


  
Sci. Rep., 2014, 4, 5327.
プレスリリース(平成26年6月18日)

 光励起種の酸化還元電位を知ることは、人工光合成などの光物質変換反応系のしくみを理解し、より優れた反応系を構築するために極めて重要です。本研究では、従来行われてきた電気化学測定法にわずかな工夫を加えることで、金属錯体の光励起状態における酸化還元電位を簡便に直接観測することに成功しました。


  
CrystEngComm, 2013, 15, 6122–6126.

 錯体触媒のような機能性分子の自己集積化を自在に制御することは、新規反応場や機能を有する超分子材料・ナノデバイスを開発する上で重要です。本研究では、新たな自己集積化の制御法として、配位子に相補的なアレーン-パーフルオロアレーン相互作用部位を導入することで、室温でのパドルホイール型錯体の配列制御に成功しました。


   
Dalton Trans., 2012, 41, 13081–13089.

 人工光合成の反応では、多電子の移動を効率的に行う必要があります。そこで、プロトンと電子が同時に移動するプロトン共役電子移動(PCET)に注目し、解離性プロトンを持つ配位子を導入しました。その結果、電荷の変化を伴わない4電子の移動を達成し、また酸素発生を行うことにも成功しました。


   
Chem. Commun., 2012, 48, 239–241.
プレスリリース(平成23年12月22日)

 酸素発生触媒の活性種はこれまで多くの研究者が注目してきましたが、そのほとんどは間接的な示唆のみにとどまっていました。我々は分光化学測定により、ルテニウム単核錯体の触媒反応中で活性種であるルテニウム5価オキソ種を含む反応中間体を直接検出し、触媒メカニズムの大部分を明らかにしました。
 日刊工業新聞(平成24年1月10日)、日経産業新聞(平成24年1月12日)、科学新聞(平成24年1月20日)で紹介されました。


  
Angew. Chem. Int. Ed., 2012, 51, 656–659.
プレスリリース(平成23年12月16日)

 ルテニウム二核錯体と脂質との複合体が、溶液中で自己集合し超分子マイクロテープ、次いで超分子マイクロチューブを形成することを見出しました。このチューブは簡単な刺激(振とう)によってマイクロテープに戻り、また静置することでマイクロチューブを再形成します。この研究は崇城大・黒岩研究室と共同で行われました。
 日刊工業新聞(平成23年12月27日)科学新聞(平成24年1月13日)で紹介されました。


         
Chem. Lett., 2010, 39, 1146–1148.

 我々が発見した酸素発生触媒としてはたらくルテニウム錯体をITO透明電極上に修飾することで、電気化学的に酸素を発生させる電極の作成に成功しました。さらに、この触媒が電極上でも分解せずに酸素を発生させることや、錯体1分子の反応で酸素が発生しているということを証明しました。


   
Chem. Asian J., 2010, 5, 2369–2378.

 これまで30年間、酸素発生反応の酸化剤としてセリウム(IV)イオンが用いられてきました。しかし、セリウム(IV)に配位したOH-イオンがラジカル性を帯びていることが示唆され(上図右、セリウム錯体のスピン密度分布)、我々のルテニウム単核錯体の系ではセリウム(IV)が酸素発生反応に重要な役割を果たしていることが判明しました。


   
Chem. Lett., 2009, 38, 434–435.

 貴金属ではなく安価な鉄を用いた水素発生触媒の開発が求められていますが、従来、鉄の水素発生触媒能は非常に低いと考えられていました。我々は、鉄二核ジチオレン錯体が水溶液中の酸のプロトンを高効率・低過電圧で還元し、これまでの鉄錯体の中で最高活性の水素発生触媒として働くことを見出しました。



Chem. Lett., 2009, 38, 182–183.

 アクア配位子をもつルテニウム単核錯体が、水からの酸素発生触媒として非常に高活性、かつ非常に安定であることを見出しました。これは、「分子内に2つ以上の金属イオンをもつ錯体しか酸素発生触媒として働かない」という30年間の常識を覆す驚くべき結果であり、世界に大きなインパクトを与えています。

pagetop