大阪大学には、有機機能物質研究に関連する専攻が工学研究科、基礎工学研究科、理学研究科、薬学研究科ならびに関連する研究センターなど部局をまたいで多く存在します。
これらの専攻が部局の枠を超えて、分子技術に関して未来を見据えたコンセンサスを構築すべく、連携型融合研究組織「分子技術を基盤としたイノベーション」(設置期間:平成28年度~33年度)を立ち上げました。
本連携型融合研究組織では、工学研究科、基礎工学研究科、理学研究科、薬学研究科に属する化学系専攻さらに学外の東京大学、北海道大学、大阪歯科大学および理化学研究所に所属する有機機能物質研究に携わる若手研究者より構成される部局横断型研究組織です。
組織、部局、そして専門分野を超えて、科学技術の根幹を担う分子を作る・分子を見る・分子を操る・分子を使う技術の深化とイノベーション創出を目指して活動しています。
窒素、リン、ヨウ素をはじめとする様々なヘテロ元素の特性を活用して、新奇な有機分子変換手法の開発や特異な光電子機能を示すπ共役分子の創出に重点をおいて研究しています。これまでに、ハロゲンとアミン類が示す特異的な反応性に基づいた新奇な骨格転位反応の発見・リン元素含有π共役分子の電子構造に起因した新規電子受容体の創製・新しい機構を経る熱活性化遅延蛍光材料の開発などに成功しています。
ヘテロ元素・有機合成化学・π共役分子・遷移金属触媒・有機電子材料
大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻南方研究室
takeda[at]chem.eng.osaka-u.ac.jp
分子と分子を繋ぐ化学結合は電子の授受により形成されます。通常、電子を受け取る分子と電子を供与する分子は強く引き合います。しかし、特殊な環境を用意すると、これらの分子間には「近づき結合したいけど、これ以上近づけない!」というフラストレーションを生じさせることが出来ます。本研究では、この様な分子の間に働くフラストレーションを巧みに操り、様々な化合物の創成に活用していきます。
典型元素・有機金属化学・Lewis酸・Lewis塩基・Frustrated Lewis Pairs
大阪大学大学院工学研究科附属オープンイノベーション教育研究センター (応用化学専攻生越研究室 兼)
hoshimoto[at]chem.eng.osaka-u.ac.jp
高周期典型金属の“中程度のルイス酸性”と“π電子親和性”の特性に着目して研究を進めています。代表的なルイス酸であるホウ素やアルミニウムは高いルイス酸性のために配位性官能基が存在する場合には目的の官能基を活性化することが困難ですが、中程度のルイス酸性を活用すれば、他の官能基が存在する中で、望みの官能基だけを選択的に活性化できることを見出しました。さらに、高周期金属特有の大きなイオン半径に由来する高いπ電子親和性により炭素-炭素多重結合の活性化も可能であることも見出し、インジウム、ガリウムおよびビスマスを用いた新規反応の確立を行っています。
典型金属・有機合成・有機金属化合物
大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻安田研究室
nishimoto[at]chem.eng.osaka-u.ac.jp
ゼオライトなどの多孔性材料は我々の生活の様々なところで利用されています。
私達は、外部刺激応答性を有する有機物を用い、van der Waals力といった
弱い分子間相互作用を利用することで、純有機物からなる「柔らかい」多孔性材料の開発を行っています。
これらの材料は、熱や光といった外部刺激を与えることで、大きくその構造や性質を変化させ、
分子取り込み特性のみならず発光・電導・極端な色の変化など様々な機能を発現します。
また、構成分子に適切な修飾を施すことによる機能制御も行っています。
多孔性材料・有機結晶・分子間相互作用・刺激応答性分子
大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻櫻井研究室
yakiyama[at]chem.eng.osaka-u.ac.jp
分子の中にある電子は二つずつ対を作って安定していますが、対を作っていない電子が存在する化合物が存在します。それらは開殻分子と呼ばれ、磁性や電気伝導性など特別な物性をもつことが知られています。私たち研究グループでは、新規な開殻π電子系分子や開殻性金属錯体を設計し、それらの新奇な合成手法の開発を行っています。
π造形科学・開殻分子・機能性分子材料・分子磁性材料
大阪大学大学院基礎工学研究科物質創成専攻直田研究室
suzuki-s[at]chem.es.osaka-u.ac.jp
生命現象の解明・制御を目指し、特に糖鎖に着目して研究を進めています。糖鎖は“細胞の顔”といわれ、多様な機能を持ちます。一方で、タンパク質や核酸と異なり、複雑構造を有する糖鎖を作る方法論は確立されておらず、糖鎖研究の発展のためには糖鎖の化学合成が重要です。私は、糖鎖およびその誘導体を作り、これを使って糖鎖機能の解明、制御を行っています。具体的には、翻訳後修飾糖鎖の合成と機能解明、糖鎖複合がんワクチンの開発などを行っています。
ケミカルバイオロジー・天然物化学・糖鎖・糖タンパク質・がんワクチン
大阪大学大学院理学研究科化学専攻深瀬研究室
manabey[at]chem.sci.osaka-u.ac.jp
ベンザインは、上手く使うことで色々な分子を作ることができます。しかし、その極めて高い反応性は、目的の分子のみを作る上では逆に欠点にもなっていました。我々は、『ホウ素』や『ケイ素』を司令塔に抜擢することによってベンザインと反応剤の反応を自在に操り、目的の分子のみを選択的に作ることに挑戦しています。また、肉眼では決して見る事が出来ない分子の挙動を、計算化学を利用して見ることにもチャレンジしています。
ベンザイン・環化付加反応・反応位置制御・らせん分子・計算化学
大阪大学大学院薬学研究科薬品製造化学分野
ikawa[at]phs.osaka-u.ac.jp
遷移金属触媒を用いて分子を作る新手法の開発研究を進めています。とくに遷移金属触媒の金属原子上に負電荷を付与することにより、触媒の機能を操り、これまでにない触媒機能の発現を目指しています。これまでに、負電荷を有する高活性な触媒中間体を単離し、構造を見ることに成功しています。また、さまざまな手法を駆使してその反応性を明らかにする研究も進めています。
遷移金属触媒・カップリング反応・結合形成反応・不活性結合の切断
東京大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻野崎研究室
iwasaki[at]chembio.t.u-tokyo.ac.jp
共役パイ電子系の分子を合成し、その配列をデザインすることによって、新しい機能性有機材料の創出を目指します。機能性分子に非共有結合性の連結モジュールを組み込む結晶工学的手法により、例えば分子のスタッキングの幾何構造を制御して蛍光発光や電荷輸送などの物性を変調させたり、分子を水素結合で高次にネットワーク化することによって、形状・大きさ・表面特性などを規格化したナノ空間を造形します。
結晶工学・共役パイ電子系・水素結合・多孔性材料・有機電子材料
北海道大学電子科学研究所
hisaki[at]mls.eng.osaka-u.ac.jp
環状オリゴ糖の一種であるシクロデキストリン(CD)を修飾して様々な金属錯体への導入を図っています。分子を集めてつなげるをテーマにホストゲスト化学を巧みに利用した遷移金属触媒の開発を目指しています。CDは不斉空間を有するため、不斉反応への応用が期待できます。また、ロタキサンにおけるCDの環動性を利用した歯科材料開発も目指しています。
ホストゲスト化学・シクロデキストリン・不斉合成・歯科材料
大阪歯科大学 化学教室
tsuda-s[at]cc.osaka-dent.ac.jp
新しい化学反応の開発を通じて、生命科学研究に有用な分子プローブの斬新な合成手法を創出します。とくに、炭素11やフッ素18のような、極めて寿命の短い陽電子放射核種を持つ、PETプローブの開発に注目しています。生物活性分子の動態を、ヒトを含めた生体中で見ることで、生命現象の理解や医学・創薬研究に寄与します。
不活性結合の切断、触媒反応、PETプローブ、ケミカルバイオロジー
理化学研究所 ライフサイエンス技術基盤研究センター 分子標的化学研究チーム
takashi.niwa[at]riken.jp
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Graduate School of Engineering, Osaka University.