研究課題 4. 病原性原虫クリプトスポリジウム・オーシストの磁気分離
 

 1. 磁性吸着剤を用いるクリプトスポリジウム・オーシストの磁気分離による除去

 病原性原虫クリプトスポリジウム・オーシストによる集団感染の例としては、1993年の米国ミルウオーキにおいて40万人余りの感染者が発生し、100人以上の死者をもたらした。また、我が国においても1996年に埼玉県越生町で水道水による集団感染が発生し、8000人以上の発症者があり、その対策が急がれている。オーシストは直径5 μm程の大きさで二層の壁で囲まれている。そのため、外部からの化学物質の透過性が非常に悪く、塩素やオゾンなどの消毒剤に対する抵抗性が大腸菌などに比べて格段に強く、通常の使用濃度では十分に不活性化することは困難である。当研究室では、オーシスト除去法として種々の方法を検討した結果、フェライト微粒子を用いる磁気分離法が非常に効果的であることを見出した。この除去法は、オーシスト表面へ微細フェライトを吸着させ、磁場により分離・除去する非常にユニークな方法である。


 2. 磁気捕集・濃縮によるクリプトスポリジウム・オーシストの分析法

 従来、クリプトスポリジウム・オーシストの汚染検査は、カートリッジフィルターやメンブランフィルターを用いた試料水からの濃縮回収により行われてきた。しかし、これらの方法は低回収率、濾過時の目詰まりなどの大きな問題点を有しており、高効率の濃縮回収法の開発が切望されている。当研究室では、上述のオーシストの磁気分離法を応用し、オーシストの高性能な磁気捕集・濃縮法を開発している。

 これらの研究は、現在実用化をめざして産学共同の研究を進めている。