研究トピックス

ナノサイズの穴をもつ第三世代有機EL発光材料の開発に成功!

有機EL製品が世の中に普及してきた昨今、有機EL素子の性能向上に貢献すると考えられる熱活性化遅延蛍光(TADF)※1という性質を有する有機材料が、第三世代の有機EL発光材料として世界中で盛んに研究されています。これまでTADF材料の設計には、電子ドナー(D)と電子アクセプター(A)を直線的に連結させる手法が多くとられてきましたが、環状材料の合成・構造・物性研究は、環構築に適した合成手法や合成ブロックが不足していたこともあり、極めて限定的でした。

今回、応用化学専攻の南方研の和泉彩香博士後期課程大学院生、武田洋平准教授、南方聖司教授らを中心とする研究グループ※2は。DとAが交互に繰返して環状に連結したTADF材料の開発に成功し(下図)、これが結晶化条件の違いによって異なる発光色を示すことや、効率的なTADF特性を示すことを発見しました。また、環構造が物性に与える影響を調査するために、対照物質としてD?Aが繰返し直線的に連なった分子を別途合成し、物性を調査した結果、環状分子の方が直線状分子よりも発光におけるTADFの寄与が高く、TADF材料としてより優れていることが明らかとなりました。

図 今回開発した環状TADF材料の概略説明図

本研究成果により、これまで未発展であった環状TADF材料の創製研究が加速され、ナノサイズの穴をもつ多孔性構造とTADF機能を活かしたガスや水分子などの化学物質のセンシング材料開発へ発展することが期待されます。

本研究成果は、2020年1月2日(木)(日本時間)に、国際的に著名な一般化学雑誌である米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society」のオンライン速報版としてジャーナルHPに公開されました。

【論文タイトル】:“Thermally Activated Delayed Fluorescent Donor?Acceptor?Donor?Acceptor π-Conjugated Macrocycle for Organic Light-Emitting Diodes”

【著者名】:Saika Izumi, Heather F. Higginbotham, Aleksandra Nyga, Patrycja Stachelek, Norimitsu Tohnai, Piotr de Silva, Przemyslaw Data, Youhei Takeda and Satoshi Minakata

【ジャーナルHP】:https://doi.org/10.1021/jacs.9b11578

本研究は、文部科学省科学研究費助成事業 新学術領域「π造形科学」ならびに「水圏機能材料」の一環として行われたものです。

※1 熱活性化遅延蛍光(Thermally Activated Delayed Fluorescence: TADF)
エネルギーを与えられた蛍光分子は、基底状態からよりエネルギーの高い状態へ遷移し、短時間で蛍光を放射することにより再びエネルギーの低い状態へと戻る。ただし、ある特殊な条件下では、通常よりも長寿命の蛍光が放射され、これが熱活性化遅延蛍光。

※2 研究グループメンバー
大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻南方研の和泉彩香博士後期課程大学院生、武田洋平准教授、南方聖司教授、オーストラリアモナシュ大学 Heather F. Higginbotham博士、ポーランドシレジア工科大学 Aleksandra Nyga大学院生、英国 ダラム大学 Patrycja Stachelek博士、大阪大学大学院 工学研究科・生命先端工学専攻 藤内謙光准教授、デンマーク工科大学 Piotr de Silva助教、ポーランド シレジア工科大学 Przemyslaw Data准教授

本研究の詳細はこちら
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2020/20200108_2

南方研究室
http://www.chem.eng.osaka-u.ac.jp/~minakata-lab/index.html

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