研究トピックス

セルロースの固有複屈折を解明!

木材などから得られるセルロースナノファイバーは、成膜すると柔軟で高強度かつ低熱膨張性の「透明な紙」になることが知られ、フレキシブル・ディスプレイの透明基材など光学用途への応用が期待されてきました。しかし、セルロースが持つ基礎的な光学制御性能「固有複屈折」が明確でないことがボトルネックとなり、位相差を制御する本格的な光学部材としての活用が進んでいませんでした。

この課題を解消するために、大阪大学産業科学研究所の上谷幸治郎助教、古賀大尚准教授、能木雅也教授の研究グループは、最適な試料並びに測定手法を精査適用することで、天然高分子セルロースの基礎的な光学性能である固有複屈折が従来予想より高いことを解明しました。固有複屈折は屈折率の最大異方性を示す指標で、その値が大きいほど光の位相差を制御する性能が高くなります。

本成果により、セルロースナノファイバーから作る紙材料「ナノペーパー」を「光を制御する紙」として用いることが可能となり、低い熱膨張性、高い熱伝導性、フレキシブル性を併せ持つ高機能な光学補償部材としての活用が期待されます。

また固有複屈折が判明したことにより、これまでX線回折法等の手法で配向性が求めることができなかった非晶性セルロース試料(セロファン膜・レーヨン繊維など)でも、複屈折測定から精密な配向性が導出可能となるため、様々なセルロース素材の精密な工学応用が推進されます。

図 セルロースの配向性試料によって光の位相差が制御できる

本研究成果は、2019年2月22日(金)(日本時間)に米国科学誌「ACS Macro Letters」(オンライン)に掲載されました。

タイトル:“Estimation of the Intrinsic Birefringence of Cellulose Using BacterialCellulose Nanofiber Films”

著者名:Kojiro Uetani, Hirotaka Koga, Masaya Nogi

本研究の詳細はこちら
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2019/20190417_1

研究グループ
https://www.sanken.osaka-u.ac.jp/labs/nmat/

※:光学補償部材
液晶ディスプレイなどに使われる位相差や偏光状態を制御するフィルム部材で、高品位な表示のために視野角やコントラスト、色づきなどを制御する重要な役割を担います。

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